大判例

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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)1448号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二、<証拠>を総合すれば次の事実が認められる。

(イ) 事故現場は東西に走る幅員二六メートルの舗装道路であり、巾四メートルの横断歩道が南北に表示され、二本のグリーンベルトが設置されている。信号機の設置はなく、当時南側のグリーンベルト上で鈴木靖男巡査部長が交通整理を行なつていた。

(ロ) 原告は右横断を北から南に横断し、北側グリーンベルト上にて、右鈴木巡査部長の車両進行の手信号にしたがつて待機していた。鈴木巡査部長が同人の面前を通過して行なつた車両の最後の一台が横断歩道を通過し終つたとき両手を上に挙げ車両に対し「注意」の信号をなした。原告は右の注意信号の最中に、右方より来る車両の有無を確認することなく横断歩道を四、五歩出たとき右側より西より東に走つて来た被告車に衝突された。右注意信号中に原告と反対側のグリーンベルト上から多数の学生が一斉に横断を始めていた。

(ハ) 被告今井田は鈴木巡査部長の前を通過する自動車と対向車線を時速約二五キロメートル進行し、本件横断歩道より約八〇メートル西にある歩道橋から約三〇メートル進んだ地点(本件横断歩道より約五〇メートル)で鈴木部長の車両「進め」の手信号を確認し、さらに二〇メートル進んだ地点(本件横断歩道より約三〇メートル手前)でも鈴木巡査部長の「進め」の手信号を確認したので、速かに進行しようとしてトップからセカンドにギヤーチエンジをした。このとき右警察官が「注意」の信号に変えた。同被告は右側(北側)グリーンベルト上の多くの学生群が「注意」の信号と同時に横断を開始したことおよび左側(南側)グリーンベルト附近に歩行者が居たことを知つたまま時速二五キロメートル位の速度が進行したため車道上の原告を発見し急ブレーキをかけたが間に合わずこれに接触した。

<証拠判断略>

右事実によれば、被告今井田は、本件横断歩道の手前約五〇メートルの地点から車両に対する「進め」の警察官の手信号を確認したのであるが、警察官の手信号は信号機によるものと異り必ずしも一定の時間持続するものとは限らずその時の交通状態により長短があり得、注意の信号も信号機によるものより概ね短いのが一般であるから、南側のグリーンベルト上に多数の学生が立つており、北側のグリーンベルト上にも歩行者が待機していた状況の下において、五〇メートル進む内に信号が変り横断待ち歩行者の歩行開始あることは充分予期できるところであり、万一に備えて何時でも停車できるよう減速徐行すべき義務があつたにもかかわらず、漫然同速度で進行した過失があり、民法七〇九条の賠償責任がある。

三、被告今井田は、右に述べた過失があるが、原告にもたとえ反対側で横断開始の事実があつたとしても警察官の「注意」信号(歩行者に対する関係ではいまだ止れの信号である(道路交通法施行令第四条)中に右側から来る車の有無を確認せず車道に進出した過失があり、賠償額の算定にあたつて斟酌されねばならず、そしてこの原告と被告との過失を対比すると概ね六対四と認めるのが相当である。(荒井真治)

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